浪人が許される環境でなかったので、滑り止めで合格した大学に入学したものの、成績上位者の就職先を聞いて愕然となりました。地元の中堅中小企業すら難しい状況でした。大学での勉強だけでは将来が暗すぎる。学歴以外の実力をつける必要性を痛感しました。
初心者でも2年半でインターハイを目指していた高校のバスケットへボール部のことを考えました。一流選手をスカウトした強豪高校のように出来上がっている会社や組織に就職しても活躍の場がない。人材や資金的に制約はあっても、創意工夫を重ねて発展する会社を作れないか。いくつかの会社や事業の発展にかかわれないか。私は、コンサルタントとして企業の発展を指導支援できるようになると目標を定めました。経営者の信頼をえるために、まず税理士資格を取得する。経験を積んだ上で、経営コンサルタントとして活躍したいと決心しました。
税理士を目指して勉強を始めたころ、幸運が訪れました。ある1人の辛口で評判の先生に出会いました。大学の現状に危機感を持たれ厳しいことで有名な先生です。先生の考えは、「国立大学や有力私学の大学生ならまだしも、出身大学の学歴が武器にならないのなら、個人で何かを身につけなればならない。地域の中小企業を支援できるような本格派の税理士を真剣に目指すなら支援する。」ということでした。ただし、「基本を大切にしなさい。頭で理解するだけでは実践で使えない。体で覚えるまで繰り返しなさい。小手先の受験対策はやってはいけない。」と厳しく指導されました。3年生のときに「税理士試験の簿記論に科目合格しました。」と喜んで報告したら「まぐれだから、科目合格は忘れて来年もう一度受験しなさい。」と辛口でいわれました。おかげで気を抜かず勉強し、翌年もう一度科目合格し、税理士の資格を取得するまでがんばれました。簿記検定で1級を受験し、1点足りず不合格になったときも、「惜しいのではない、どこか根本的な考え違いがあるからだ。しっかり最初からやり直しなさい。」とまた辛口で、基礎からのつみあげを指示されました。おかげさまで次の回に合格できました。基礎からの積み上げと、愛情のある辛口の指導の大切さが身にしみました。
大学院で租税理論を学んだ後、税理士会の支部長を務めていた京都の税理士の事務所で4年間税理士修行をしました。入所当時は、手書きの総勘定元帳を作成していました。そして、事務所のコンピュータ化に携わりました。つまり、実際に手作業の会計を経験した最後の世代です。手間がかかって大変でしたが、今となっては、とても重要な体験です。それは、手間のかかる作業をどのように工夫して合理化していたか、を実践を持って覚えられたからです。
4年間実務的な修行を終え、平成元年5月に地元滋賀県草津市で税理士事務所を独立開業しました。当時最年少での開業でした。平成元年には消費税がはじめて導入され、説明会や無料相談の講師を精力的に務めました。消費税の節税を使った法人成り案件や独立開業を数年間で30件以上支援しました。独立したときのごたごたの経験をいかして、スムーズで賢い独立開業をアドバイスしています。
指導教授の薦めもあり平成2年から約15年間、出身大学の龍谷大学経営学部で講師を勤めました。特別研修講座にて、税理士志望者に簿記論、財務諸表論を指導しました。目標をしっかり定め努力を継続し成果を出す。そのためには勉強し続けられる環境を整えることが大切です。短期的には意欲だけでも結果が伴います。でも1年以上勉強を続けるためには自らが環境を整備する必要が出てきます。時間的制約、金銭的制約、体力的制約、場所的制約などを管理できないと学習能力が十分な学生でも合格できません。これら環境整備のアドバイスに重点をおいて指導していました。おかげさまで講座の受講生から20人以上の税理士が誕生しています。
最近、税理士や会計事務所に対して
「税理士が怖そうで相談できる雰囲気にならない。」
「税理士が会社の経営に関心を持ってくれない。」
「税理士の説明は専門用語ばかりでよくわからない。」
「決算対策、税金対策、経営戦略の相談に乗ってくれない。」
「税務調査のときに会社を守ってくれない、税務署よりで困った。」
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